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2008年4月12日新宿テアトルタイムズスクエア他全国順次公開 /配給:東宝東和 映倫PG-12/上映時間123分/製作国イギリス (c)2007 Universal Studios. All Rights Reserved. ![]() この作品は、表面的には“大河ロマンス”なのだが、 じつは、映像という物的証拠を吟味して、観る人一人一人が陪審員となる“法廷モノ”でもある。 観た人の判決により、この作品の良さは180度変わるだろう。 この映画は、観る人の育った環境や性格や人生経験により、まったく違った作品となるだろう。 この作品に限らず、映画とは観る人によって喚起されるものが異なるのがあたりまえなのだが 『つぐない』は、観客が、二人姉妹のどちらの立場に立つかで まったく正反対の感情を持つことになるだろう。 *** “姉妹の人生物語”である本作では 姉セシーリア役は、キーラ・ナイトレイが単独で演じているが 妹ブライオニー役は、シアーシャ・ローナン(13歳)、ロモーラ・ガライ(18歳)、 ヴァネッサ・レッドグレーヴ(晩年)と、ブライオニーの年齢により3人の女優が登場する。 年齢は違えども3人のブライオニーは、みな、 想像力という感性の高さと脆さを合わせ持っているキャラとして描かれている。 だが、彼女は自分の犯した過ちをつぐなうために、自分を変化させていく。 一方、セシーリアは引き裂かれた恋人への永遠の想いを誓い、決して揺らぐことがない。 つまり、セシーリアは“不変”で、ブライオニーは“変遷”していくのだ。 これがこの映画の重要な鍵。 そして、姉妹の“不変&変遷”というのは、この映画において 人間と社会を象徴しているようにも思えてしかたない。 人々はいつの時代も平和で幸福な暮らしを望んでいるのに 社会という現実はその理想とは違い移り変わっていく。 たとえば、3人のブライオニーと時代背景の関係を書き出すと・・・ 1)破壊の序章 『つぐない』のストーリーは、1935年のイギリスから始まる。 姉セシーリアの恋人ロビーは、13歳ブライオニー(ローナン)の過ちのせいで、逮捕され、兵役の懲罰をうけることになる。 ブライオニーとって、自分の行為は過ちではなく大儀という“正義”だったのだろう。 史実では、この年に、ドイツのヒトラーがヴェルサイユ条約を破棄、 再軍備を宣言し英独海軍協定を締結した。 2)破壊 それから4年後の1939年、ポーランドに侵攻したドイツに対し、英仏は宣戦布告。第二次世界大戦開戦。 18歳となったブライオニー(ガライ)は自分の過ちを悔い、 目を覆いたくなるような負傷兵たちの姿に混乱しながら不馴れな看護士見習いとして働く。 フランスへ兵士として送り込まれたロビーは、負傷し戦地をさまよう。 セシーリアは家と絶縁し、ブライオニーとは別の病院で看護士をしながらロビーの帰りを待つ。 3)再生 1999年。年老いたブライオニー(レッドグレーヴ)は小説家となっていた。 といったように、ブライオニーの変遷は、社会背景とリンクしている。 時代が大きく変わるポイントを示すかのよう3人の女優が出演しているのだ。 姉セシーリアは、人々の“不変的な理想”であり 妹ブライオニーは、社会の“変遷する現実”を表している。 また、女性性に焦点をあてれば、姉セシーリアは“女”として完成された理想の“蝶”、 妹ブライオニーは“少女”で、変態途中の“蛹”かもしれない。 ![]() “不変&理想”を貫くか、“変遷&現実”を受け入れるかで、さきほど書いたように 観る側は二つの相反する感情に揺れ、自分の姿勢を問われる。 この作品は、表面的には“大河ロマンス”なのだが、 じつは、映像という物的証拠を吟味して、観る人一人一人が陪審員となる“法廷モノ”でもある。 観た人の判決により、この作品の良さは180度変わるだろう。 たとえば、姉妹同士あるいは親友同士で同じ人を好きになってしまった経験があるかないか その場合、恋に破れたのはどちらだったのか、で大きく判決は変わるだろう。 恋愛ではなくても、目標を同じとする近親者がライバル同士という関係でも同様だと思う。 その究極が、同じ人間同士が争う“戦争”でもあるのだが・・・。 観る人の過去の経験により、この映画の評価もまったく違うものになるだろう。 私の場合は、判決はくださない。いつも選ぶのは、相反するモノ同士の間で揺れる葛藤。 葛藤が残る映画というのは、瞬間的にはヘビィなんだけどね。 あ、それから、もうひとつ大事なことを。 前半では、妹ブライオニーの稚拙さが浮き彫りになったけれど 後半になってから、悔い改め自分を変えようと努力する妹ブライオニーに対し あまりにも不変を貫き通す姉セシーリアが、逆に子どもじみているように感じた。 セシーリアには、理想ばかり追う青い香りがちょっと漂ってたかな。 ![]() 表面的に“大河ロマンス”なだけでないとお聞きして興味が増しました。 (↑思い切り大河ロマンスなのは個人的にちょっと苦手なので...) こんなに巧みにネタバレせず、情報を伝えていただいて、ありがとうございます! 本作品はもちろん未見でわかりませんが、「ヒトラーの贋札」にも「理想ばかり追う青い香り」が漂う人物がいましたよね。理想は気高いと思うけど、そういう場合なのか?と考えてしまいました... >「ヒトラーの贋札」にも「理想ばかり追う青い香り」が漂う人物が
いましたね。あの人が原作者ですよね。彼が死んでいたら、2008年の日本でこんなふうに Yokoさんとあの映画についてコメントのやりとりはしていないでしょうね(笑)。彼が生き残ることができたのは、目前の現実を受け入れようとした人がいたから。ただ「理想ばかり追う青い香り」が漂う彼のような人がいなければ、ドイツは勝利していたかもしれず、その場合も事実は闇に葬られ、こういうことがあったことも誰も知らないままでいたでしょう。そう思うと感慨深いですね。あの映画を観て、様々な考え方をなんとか融合し、みなが生き延びる最善策を模索することの大切さをあらためて感じました。
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